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霹靂舞台劇~狼城疑雲

1998年8月28、29、30、31日 14:30~、19:30~ (合計8回上演)@國家戲劇院
 霹靂が伝統劇と肩を並べた!との宣伝文句で打って出た『狼城疑雲』。
台北の国立中正文化中心(中正紀念堂の敷地)の大ホール、國家戲劇院で上演された舞台劇。霹靂唯一(?)の推理物である。國家戲劇院は同じ中正文化中心にある國家音樂廳とともに台湾文化・芸術の殿堂とされている総合芸術文化施設である。

 伝統布袋戲とは趣を異にする霹靂だが、ここでの上演は伝統布袋戲の演技(技法)も交えたもので、オープニングでは定番の獅子舞、皿回し(ちょっと違うかも?)やその皿を飛ばしたり、火をつけて回したり、ロープの上を一輪車に乗った人形が行き来したりという演出も興味深い。又、空中にロープを張って木偶を行き来させたり、ドライアイスやライティングを多用したり、色々効果を用いて舞台として十分楽しめる内容になっている。
舞台の階段をさりげなく昇り降りする木偶、あたかも本当に昇り降りしているようだ。実際に見たら楽しかっただろう。ただし生で見たら字幕が無いので意味不明だと思うが…(苦笑)

狼城疑雲関係者写真
版権所有:霹靂多媒體公司

 1998年は本編シリーズでは『霹靂狂刀之創世狂人』の時代。ちょうど映画版の霹靂『聖石傅説』が制作されている真っ最中の頃だ。今となっては木偶の造型が聊か古いが、懐古的な気分も味わいながら見られる作品である。機会があれば是非御覧いただきたい。

VCDについては 『霹靂英雄榜之 狼城疑雲 國家劇院公演現場錄影』を参照。

ストーリー紹介(概略編)

 傲笑紅塵や劍君といった名だたる剣豪は「狼城」の城主の招待を受けて名劍展示の宴に出席する。が、思いもかけなかったことに大衆の面前で狼城城主がなんと殺害されてしまった。凶器はまさ招待客にお披露目されていた名剣『章武寶劍』! 大勢の剣豪が注視している場所で誰にも悟られず殺人を遂行するなど、これほどの知恵と技を持っているのは一体誰なのか? 犯行現場で凶器を手にしていた城主の腹心、荊師爺が最有力容疑者として牢に入れられる。だが狼城の總管、金不捨は彼が無実でこれは濡れ衣だと主張する。そして自ら武林第一知恵者で神人といわれる清香白蓮素還真に事件解明の依頼に赴くのであった。

 素還真自ら狼城を訪れた時、城内には金總管と黑教頭をそれぞれ頭とする派閥争いが発覚していた。城主の死亡に伴い表面化し、双方とも十分な犯行動機があった。素還真はさらに美貌の若き城主夫人には隠された血塗られた過去…復讐をむねに城主に嫁いだということ…を探り出す。払拭出来ない疑惑、誰もが容疑者でありながら、どれも決定的証拠の無い状況で更なる悲劇が発生する。今度は城主の幼い息子が刺殺されてしまったのだ!

狼城疑雲タイトル画像
 素還真は冷静な観察眼で複雑に絡みあった手掛かりを解きほぐしていく。そして最大の容疑者を絞込み、秦假仙達に城主の幽霊を装わせて更なる探りをいれ、犯人が破綻をきたすよう仕向けるのであった。 毒を持って毒を制す。犯人の動きから捜査の方向を定め、とうとう犯人自ら己の犯行を大衆の面前に晒すことになる。

 素還真が暴いた首謀者は夫人とその乳母だった。犯人が明らかにされると、狼城內の覇権争いは更に過激さを増していく。犯行は解明されたが、人の欲望は取り除きがたい… 狼城內の他者を殺し権力を奪おうとする者、どうして城主を殺した犯人だけだと言えるだろうか?

(e-pili霹靂網にある紹介『狼城疑雲』の意訳。中国語がわかる方、誤解釈があればご教授ください)

ストーリー紹介(私見・偏見コメント編)

第一幕
 武林のとある地方の城、「狼城」で名剣お披露目の宴が開催されることになった。(狼の遠吠えと狼の電光掲示が背景に…) 宴は賑やかに進行し、いよいよ名剣がお披露目されたその時、突然全ての明かりが消え一面暗闇に包まれる。明かりが戻ると、なんと城主は殺害されていた! 城主から招待を受けていた来客達…剣の達人の傲笑紅塵や劍君といった大衆の面前での凶行。そして凶器はまさにお披露目された名剣『章武寶劍』だった。剣豪達の目の前でこのような犯行を犯すほどの知恵と技を持った犯人は一体誰なのか?
 城主が殺害された直後に凶器の寶剣を持っていた城主腹心の部下、荊師爺が第一に疑われ、対立勢力の黑護法により牢に入れられてしまう。しかし總管の金不捨はとんでもない濡れ衣だと彼の無実を主張し、自ら武林の第一知恵者で神人といわれる清香白蓮素還真に事件解明の協力を求めに赴くのだった。期限は10日。10日以内に真犯人を見つけ出さなければ、荊師爺は極刑に…

第二幕
 所かわって瑠璃仙境。(一輪の巨大な蓮の蕾が生えて(?)いる。)花びらが開くと…巨大蓮の花の中から素還真登場である(ペリっと音が…! 笑) 花の中で金不捨を迎えた素還真。彼の協力依頼にお家騒動だからとあっさり拒絶。
金不捨が去り、素還真も再び蕾の中に戻って退場すると、突然瑠璃仙境に火の手があがる! これは何者かの警告か? 再登場の素還真(今度は歩いて登場)は彼の技の「百氣寒霜」を繰り出し、あっという間に消火する。(消防車より効率が良い。消火器の換わり、一家に一人素還真♪) その後「関係ないことに首を突っ込むな」との警告文も届く。だがこれらはすべて素還真の想定内の出来事で、最初協力を渋ったのもより多く捜査の手がかりを掴むためだ。そして素還真は届いた警告文を逆に「招待」と理解するのだった。
(実際警告文の形を借りた「招待」だったのだが、計画した人はよく素還真が裏読みするってわかっていたなぁ…と。素素さんは天邪鬼だって有名だったりして…?)
蓮の中から素還真
 城へ向うことに決めた素還真は義兄弟の青陽子とともに、犯行現場に居合わせた傲笑紅塵の家に行き事情徴収。琴を奏でる紅塵の傍ら、見るからに入りにくそうに入口で佇む素還真(もじもじ素素が可愛い♪←素還真ファンの戯言です、ハイ。) 傲笑紅塵と素還真は過去色々な経緯があり、あまり良好な関係では無いのだ(傲笑紅塵が一方的に嫌っている)。所々なんとなくあてつけがましい台詞を交えて当日の様子を語る紅塵。(事件解決の為なんだから何もそんなに嫌みったらしく話をしなくても…と思わずもがな…紅塵ファンの皆様ご容赦 汗)

第三幕
 城主亡き城では、金總管と黑教頭をそれぞれ頭とする派閥争いが表面化していた。当日剣を保管していた范義は、その剣とともに行方不明。誰もが城主殺害の動機を持つ中、素還真は美貌の若き城主夫人の血塗られた過去という大きな手がかりを掴む。一族全滅の恨みを抱えながら城主に嫁いできたことを洗い出したのだ。(狼城は彼女の一族のものだったのだが、黑闇堂に滅ぼされ城を奪われてしまった。そして黑闇堂は娘の秋痕に心を奪われ結婚してしまう) (女の色香に惑わされちゃ駄目ですよねぇ…お家騒動の火種ですよ~)
 全員に何らかの動機がありながら、決定的な証拠が無いまま、あろうことか新たな殺人事件が起こってしまう。今度は城主の子が殺されてしまったのだ。(この子供、12歳設定なのだが…もっと幼いと思うぞ…) 現場に駆けつけた寒彤は城内を警備していた剣君に犯人と間違われるが、遺体検証で彼の武器で殺されたのではないことが判明し、素還真は寒彤の協力も得て更に調査を重ねる。(寒彤は城主と前城主の娘、秋痕との婚姻に反対し城主の不興を買ってしまうが、陰ながら城主を保護していた忠臣。)

第四幕
 覇権争いか復讐か? 複雑な過去が絡み合う中、徐々に謎の真髄に迫る素還真。秦假仙達三人組みの協力で、城主の亡霊を演出し、犯人確定のための罠を仕掛けることに…
そしてとうとう最重要容疑者を絞込む。ついに犯人は自らの行動で己の罪を白日の下に晒すのであった。

 復讐を誓った城主夫人は荊尚智や范義を誑かし乳母とも協力して城主殺害の片棒を担がせたが、息子の殺害はなんとその乳母だったことも判明する。何故息子まで殺したのかと激昂する城主夫人。半分は黑闇堂の血を引く息子、仇の血筋は残しておけぬと無常に言い切る乳母に夫人は正気を失ったようになる。城主の仇を討つべく乳母に襲いかかる者、また対抗勢力どうしが剣を交え、いつの間にか城内大勢が入り乱れた戦いが繰り広げられ、あたかも戦場のようになっていく…

 素還真一行(素還真、青陽子、剣君、秦假仙達三人組)はどうしているかと思いきや、城の外にさっさと退場。放置してよいのかと言う問いに、お家騒動は民衆自ら解決しなければならないと言う素還真。
そしてこの悲劇の復讐劇は幕を降ろしたのであった…
終幕

最後に一言…

ドラマスペシャル、『素賢人は見た! 城主殺害の真相。渦巻く怨念、陰謀、そして美貌の城主夫人の秘められた過去!?』  というような有閑探偵・素還真の推理ドラマ(笑)

 なんとも笑えたのは巨大蓮の花から現れて、消えていく素還真。しかも蕾が開く時、パリっだかペキッだかの音が…開くって言うより割れてませんか~? そして思わず口ずさんだのが…「ひらいた ひらいた なんの花 ひらいた れんげの花 ひらいた ひらいたと思ったら いつのまにか つぼんだ~~~♪」
ついでに、結果的に犯罪の動機や犯人などの謎は解明されたのだが、あれじゃ関係者は見事にほぼ全員死亡になっているんじゃなかろうか…。ある意味円満解決? どたばた状態の城を見捨ててあっさり避難し帰っちゃうところが… あの城、きっと燃え落ちちゃったですね…(苦笑)
截圖版権所有:霹靂多媒體公司